先日、あるテレビ番組で今回の春の選抜甲子園でたくさんの有名投手をプロへと輩出している名門の某高校の野球部が甲子園で初戦敗退したことで二人の投手を物語に特集が組まれていました。2010年の夏の大会でエースとして大活躍し、球速145キロを計測していた投手が、突然の投球バランスを崩したことでエースの座を奪われてしまいました。本人も監督も原因は分かっていても修正できない苦しみを抱えていました。
そうした中、マイク・プライアー投手の存在を思い出しました。メジャーリーグに2001年にドラフト2巡目でシカゴ・カブスに入団、2003年にはサイ・ヤング賞を獲得した後、肩や肘の怪我に悩まされて投手です。当時、カブスの監督だったダスティー・ベーカー監督が投球数を投げさせ過ぎたのが原因と批難されましたが、専門家の間では投球メカニズムに問題があると言われていました。カブスを移籍した後も投球数に関係なく故障の繰り返しでした。
その理由は’scapular loading’(肩甲骨のため) と言われるもので、肘が肩の位置よりも低く、また背中よりも後ろにヒジが後ろに入るという動作です。また、この動きを称して’ Inverted W’(Wの逆さにした形)と言います。この動作が故障の原因と言われており、肘が肩より上に上がり難いために無理が生じ、肩関節に大きな負担が掛かり、肘でボールを押し出すような動作になり、ルーズショルダー(肩関節のソケットが緩くなり、外れやすくなる)になりやすくなります。
そのテレビで投げていたエースを奪われた投手と同じ傾向があるのではと、テレビを観て思いました。また、弊社の生徒にも高校入学後になぜかその動作が身についてしまいなかなかその癖を修正できずに悩んだ生徒もいました。
(プライア:インバードW リベラ: 右・パワーL)
この写真は両投手の前足着地時の写真を比較したものです。必ずしもインバートWになると故障するとは限りません。しかし、そのリスクがあるということだけは皆さんの知識の中に入れて欲しいと思います。右側の写真がニューヨーク・ヤンキースのリベラ投手です。155キロのカットファストボールを武器にクローザーとして長年怪我なく活躍をしています。
また、リベラ投手はパワーLというように肩よりも手の位置が上にあるLの形になっています。傾向として断然のこのタイプの形の方が故障のリスクは非常に少ないのです。
インバートWの最も気を付けなければいけないのが肘が背中よりも後ろに入った時になります。少しでも肘が後ろに入ることで簡単に投球バランスが崩れてしまう投球の怖さを私自身改めて痛感しました。どうか、正しいゼロポジションで投げられることを常に意識して投球をして欲しいと思います。