日本の野球でもこの10年間でムーヴィングファストボールと呼ばれる直球系で少しだけ打者の手元で変化するボールが主流になってきました。
打者の手元で小さく変化するために打者のバットの芯を外して内野ゴロで打者を打ち取ることができるために球数を減らすことができる球種です。そのために投手は本塁プレート上でも打者と勝負できるボールのために多少コースが甘くても打者を打ち取ることができます。打者にとっては非常にやっかいな球種です。その反対に投手にとっては非常に有効な球種となります。
日本の従来の野球理論の一つにボールをできるだけ前で打つという指導方法があります。しかし、それはこのツーシームという球種がない時代はそれでも良かったのですが、このツーシームやカットボールなど打者の手元で変化するボールを前で打つと芯を外して内野ゴロに打ち取られる傾向が強くなります。
メジャーリーグの打者が意識的にポイントを体に近くにして、反対方向に打つようにしているのはこれらの球種に対応するためです。
では、なぜこれほど打ち難いかという理由の一つに人間の動体視力にも大きく関わります。約90マイル<144キロ>のボールに対して、普通の動体視力の打者で最後の約6メートルを見失っており、また、ボンズ選手、プホールス選手にような強打者で1.8メートルから2.4メートルは見えていないという研究結果が出ています。そのために見えない範囲から変化する直球系のボールを打つことが非常に難しいためです。そのためにマリアーノ・リベラ投手のカットファストボールは打者がそのボールが来ると分かっていてもなかなか打てないと言われるにはそのためです。
私が2000年にダイエーホークス<現ソフトバンクホークス>の通訳をしていた時にブレディー・ラジオ投手がテキサス・レンジャースから入団してきました。春のキャンプでは球威がないということで非常に評価が低くかったのですが、シーズンが開幕し蓋を開けてみたら素晴らしい投球を披露し、評価が急に上がりました。そのボールがツーシームとスライダーでした。ボールが遅くてもこれだけ打者を抑えられるんだなと改めて痛感したことを覚えています。
メジャーリーグで成功をしている投手の共通点には打者の芯を外してゴロで打ち取り、球数を減らしてアウトカウントを増やすことになってきています。松坂投手でさえもこれらも課題に取り組みながら適応に苦労していることが分かると思います。どうかこれらのことをヒントに努力して欲しいと思います。